「今更やめられない」そのうちに損失をどんどん大きくしてしまうことを、今では、「コンコルド効果」という表現で言い表すことができます。コンコルドとは超音速旅客機の名称です。1960年代からイギリスとフランスが共同で開発を進めていました。夢の超音速旅客機としてロンドンとニューヨークを従来機の半分の3時間で結ぶことができるコンコルドでしたが、その開発費用の膨大さの割に販売機数が振るわず、プロジェクトを続ければ続けるほど損失が出る状況に追い込まれていました。しかし「ここまでやったんだから」「ここでやめたらこれまでの投資が無駄になってしまうから」と事業を継続したために大きな損失になってしまいました。
このように、損失を恐れて判断を誤り、より大きな損失を出すことをコンコルド効果と呼びます。第二次世界大戦中の日本はまさにこの状態でした。
特攻作戦の実施
日本軍は戦局が厳しくなる中で、すでに多大な人的・物的資源を戦争に投入していました。敗北を認めればここまでの損失を無駄にすることになる。しかし戦争を満足に戦えるだけの余力もない。そして行き着いたのは特攻作戦です。飛行機で搭乗員ごと相手の艦船へ衝突する特攻は、一部で相手艦船等に損害を与える効果もありましたが、戦局の根本的な好転にはつながらず、多くの若者を犠牲にし無意味な損失を拡大させました。これも「一度投入した犠牲を無駄にしたくない」という心理が働いて判断を誤った事例です。
戦争継続の意思決定
既に膨大な人命や資源を投入し、多くの犠牲が出ているのに、撤退や講和の判断が遅れました。これは投入した「埋没費用」を惜しむ心理(サンクコスト効果)により損失が拡大した典型であり、「ここまでやったのだから止められない」との思考パターンに陥っていました。
まとめ
これらの事例は、合理的に判断すれば戦争を続けるより撤退や講和を選ぶべきにもかかわらず、過去の大きな投資や犠牲を考慮しすぎて損失を拡大させた典型例として、戦時中日本の政策決定に大きく影響を与えました。いわば「損失回避の心理が判断を曇らせた」現象です。
以上のように、戦時中の日本の軍部・政府がコンコルド効果によって無理に戦争継続を選んだ具体例として「特攻作戦」や「撤退・講和判断の遅れ」が挙げられます。
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